仕訳帳と勘定科目

現金出納帳(複式簿記の基本)総勘定元帳

 次に、1月の仕訳帳を記帳してみます。仕訳帳の右側の青い数字が取引番号に対応し、赤い単線で区切られた部分が一つの仕訳になります。

  • 現金出納帳とは違って、今度は残高欄が無くなり、入金欄が借方、出金欄が貸方となりました。
  • 取引番号010も記入されています。そして摘要欄には(現金)や(資本金)などの勘定科目名が左の方(借方)と右の方(貸方)にインデントして書かれています。
    • 実務では "( )" を付けませんが、ほとんどの簿記テキストでは、勘定科目名であることを示すために付けています。

  • 摘要欄の左側(借方)に勘定科目名が書かれていれば同じ行の借方欄に金額が書かれ、その下の行には摘要欄の右側(貸方)に別の勘定科目名が書かれ、貸方欄に上の行と同一の金額が書かれています。
    • ―借方記入金額と、貸方記入金額は常に同一の金額が記入される―

    • これを「貸借平均記入の原則」(単に「貸借平均の原則」)といいます。

  • 多くの仕訳は借方科目一つと貸方科目一つからなっています。これを単純取引といいます。
    • 単純取引を仕訳帳に記入する場合には、借方科目を上の行に書きます。

  • 借方か貸方のどちらかが二つ以上の科目からなっているものを複合取引といいます。
    • 借方科目が一つの場合には、やはり借方科目を上の行に書きます。そして同じ行の貸方の場所に諸口と書きます。126など
    • 貸方科目が一つの場合には、貸方科目を上の行に書きます。そして同じ行の借方の場所に諸口と書きます。124など
    • 借方科目も貸方科目も二つ以上の場合には、一番上の行に借方の場所にも貸方の場所にも諸口と書きます。次の行から借方の科目を続け、その後に貸方科目を続けて書きます。138など

  • 赤い単線赤い複線ではさまれた行が、その月の合計です。
    • 借方合計と貸方合計が一致しなければ、記入にミスがあります。

  • 一つの仕訳は同じページに記入し、行が余ったら改ざん防止のため赤い三角線を引きます。
    • 5月以降の仕訳帳を参照して下さい。

  • 仕訳帳・総勘定元帳や他の帳簿でも、金額欄にある赤い単線のことを合計線ともいいます。

  • その線の下の行に合計額を記入し、その下に赤い複線を記入して、赤い複線の下に計算が続かないことを示します。この赤い複線を締切線ともいいます。
    • 帳簿の(月毎・年毎など各種計算単位の)締切には必ず赤い複線を使います。

 (現金)とある行の金額だけに着目して下さい。すると、現金出納帳の収入欄・支出欄と同じ形になります。

  • 簿記では、現金が増えたら借方(左側)に、現金が減ったら貸方(右側)に記入します。

 では(現金)と借方、貸方が逆に出てくる勘定科目名は何なのでしょうか。

  • それは、現金が増減した取引の原因・理由・目的・手段等をグループ化したグループ名です。
  • 同様に、(現金)の貸借反対側にでてくる勘定科目にとっては、その取引の原因・理由・目的・手段等となっているものが(現金)です。

 まず現金の増えた原因・理由・目的・手段等を見てみましょう。(表1)
 相手の勘定科目からは、<受入手段>が(現金)であることになります。
001ではEさんから『6,000,000円を元入(出資)された事実』を、貸方に(資本金)6,000,000 と記入する事で表現しています。
008では生徒さんから『2,000,000円を授業料として受け入れた事実』を、貸方に(授業料売上)2,000,000 と記入する事で表現しています。

 次に現金の減った原因・理由・目的・手段等も同様に見てみましょう。(表2)
 相手の勘定科目からは、<支払手段>が(現金)であることになります。
002ではF不動産に『400,000円を家賃として支払った事実』を、借方に(地代家賃)400,000 と記入する事で表現しています。
003ではK事務機に金庫の代金『400,000円を備品と認識して支払った事実』を、借方に(備品)400,000 と記入する事で表現しています。
004ではG新聞に『500,000円を広告代として支払った事実』を、借方に(広告宣伝費)500,000 と記入する事で表現しています。
005ではHパソコンショップにパソコンの代金『3,000,000円を備品と認識して支払った事実』を、借方に(備品)3,000,000 と記入する事で表現しています。
006ではD文具店に『160,000円を事務用品の代金として支払った事実』を、借方に(事務用品費)160,000 と記入する事で表現しています。
007では郵便代『32,560円を通信費として支払った事実』を、借方に(通信費)32,560 と記入する事で表現しています。
009では『4,930円が行方不明であるという事実』を、借方に(現金過不足)4,930 と記入する事で表現しています。
011では水道料『4,000円を水道光熱費として支払った事実』を、借方に(水道光熱費)4,000 と記入する事で表現しています。
012では電気料『50,000円を水道光熱費として支払った事実』を、借方に(水道光熱費)50,000 と記入する事で表現しています。
013では電話料『49,500円を通信費として支払った事実』を、借方に(通信費)49,500 と記入する事で表現しています。
014では『1,000,000円を給料として支払った事実』を、借方に(給料手当)1,000,000 と記入する事で表現しています。
015では『3,000円をリース料として支払った事実』を、借方に(リース料)3,000 と記入する事で表現しています。


勘定科目とは、取引の性質が類似したものを集計するためのグループです。単に勘定とも科目ともいいます。そのグループに付けた名前が勘定科目名です。
現金過不足勘定とは、帳簿の残高を実際の有高に合わせるために設ける勘定科目で、とりあえず資産勘定に置きます。差額の原因がわかり次第、010のように正しい勘定科目に振替えます。実務上、決算までに差額のわからない場合、小額な場合には、(雑損失)や(雑収入)に振替えます。多額な場合には、別な勘定科目を作るなどして、引き続き暫定的な資産科目(帳簿より実際の現金が少ない場合)や暫定的な負債科目(帳簿より実際の現金が多い場合)に残して原因究明に努めます。
帳簿の残高<実際の有高 : 貸方 にでてきます。
帳簿の残高>実際の有高 : 借方 にでてきます。
貸借とは、借方と貸方のことです。
余談
  • 仕訳帳の諸口について:
    • ”複合取引であっても、仕訳帳に「諸口」を記入する必要は無い”と言う説がありますが、私も同意見です。総勘定元帳では相手勘定が複数になる場合、相手勘定を「諸口」とせざるを得ませんが、仕訳帳では記帳時に、「単純取引か否か」は判断済み。後に仕訳帳を閲覧する時にも、「単純取引か否か」の区別は簡単にできます。

  • 仕訳帳と伝票の関係について:
    • 実務では「振替伝票」・「入金伝票」・「出金伝票」が、仕訳帳の機能を担っています。
    • 各伝票の一枚(一ページ)が、仕訳帳の一仕訳(赤い単線で区切られた部分)に相当します。
    • 仕訳帳の代わりに伝票を使うことによって、仕訳作業の分散化が容易になります。


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複式簿記仕訳帳
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帳簿・伝票・事務書類

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