商品売買

小口現金売掛金・買掛金

 4月からパソコン書籍の販売を始めました。新たに045に書籍仕入勘定と046に書籍売上勘定が出てきました。
 書籍売上勘定と授業料売上勘定は別の勘定科目にして、取引内容が元帳からわかるようにしました。

 まずは取引記録から仕入帳・売上帳そして商品有高帳を作ってみます。なお、取り扱い商品はA書籍とB書籍の二種類です。

  • 売上帳・仕入帳とも返品を朱書しますが、仕訳帳と総勘定元帳には朱書しません。貸借記入原則による記入で返品などを表すからです。
  • 仕入帳には日付、仕入先・仕入商品名・仕入数量・単価・決済方法、金額を記入します。合計金額は、書籍仕入勘定の12月の当月残高と一致します。
  • 売上帳には日付、売上先・売上商品名・売上数量・単価・決済方法、金額を記入します。合計金額は、書籍売上勘定の12月の当月残高と一致します。
  • 商品の売上利益は「売上高 − 売上原価」で求められます。

 A書籍もB書籍も仕入れたものが全部売れれば、仕入の合計金額が売上原価になります。ところが、どちらにも売れ残りがあります。さらに、どちらも仕入単価が何度か変わっています。売上原価はいくらになるのでしょうか。

  • 売上原価を求める方法の一つ目の方法は、先に仕入れたものから売れたと仮定して引渡単価を決める方法です。これを先入先出法といいます。
  • 二つ目の方法は、仕入のつど、仕入直前の残高金額と仕入金額の合計金額をその残高数量と仕入数量の合計数量で割って平均単価を求め、これをつぎの引渡単価とする方法です。これを移動平均法といいます。

  • * 売上原価を求める方法はこの二つの方法以外にいくつもあります。

 仕入帳と売上帳を基に、先入先出法によるA書籍B書籍商品有高帳を作ってみます。A書籍とB書籍の商品有高帳を別々に作らなければ意味の無い単価になります。
 参考のために、移動平均法によるB書籍の商品有高帳を見て下さい。

 商品の仕入と売上の処理には分記法・総記法と三分法があります。この講座では実務で専ら使われる三分法で処理していますが、分記法から説明します。

  • 分記法とは、商品を仕入れたときに仕入原価を商品勘定の借方に記入し、販売したときに先入先出法や移動平均法で求めた 引渡単価×引渡数量=売上原価 を商品勘定の貸方に記入し、同時に売上利益を商品売買益勘定の貸方に記入する方法です。分記法仕訳一覧表(仮称)を見て下さい。

  • 商品勘定の期末残高は、(商品)借方合計 4,259,000 −(商品)貸方合計4,104,500 = 154,500 となります。当然、A書籍・B書籍商品有高帳の期末残高の合計です。
    商品売買益は、480,000 − 3,500 = 476,500 となります。
    決算に当たり、借方(商品売買益)476,500 / 貸方(損益)476,500 の仕訳を追加します。
    商品勘定は、純粋な資産勘定です。
  • 総記法とは、商品を仕入れたときに仕入原価を商品勘定の借方に記入し、販売したときに売上額を商品勘定の貸方に記入する方法です。総記法仕訳一覧表(仮称)を見て下さい。商品売買益は(商品)貸方合計4,584,500 −(商品)借方合計 4,262,500 + A書籍・B書籍商品有高帳の期末残高の合計54,500 = 476,500 となります。

  • 決算に当たり、@借方(商品)476,500 / 貸方(商品売買益)476,500 とA借方(商品売買益)476,500 / 貸方(損益)476,500 の仕訳を追加します。
    商品勘定は、資産勘定と損益勘定の性質を併せ持つ混合勘定で、商品勘定の残高は意味の無い数字です。
  • 三分法とは、商品を仕入れたときに仕入原価を仕入勘定の借方に記入し、販売したときに売上額を売上勘定の貸方に記入する方法です。決算に際し、仕入の中から売れ残った部分を抜き出して、繰越商品勘定に振替えます。三分法仕訳一覧表(仮称)を見て下さい。商品売買益は、純売上高(返品・値引等控除後の売上高)− 売上原価 {純仕入高(返品・値引等控除後の仕入高)+前期繰越商品−次期繰越商品}で求めます。この講座は三分法で処理していますから、仕訳帳と総勘定元帳の関係を見て下さい。

 上記三つの処理の仕方をTフォーム商品勘定にまとめてあります。

 *この講座ではでてきませんが、商品を仕入れるときに、引き取り運賃や運送保険料などを支払うことがありますが、これらの費用(仕入諸掛)も仕入原価に含めます。また、商品を販売するときに支払う運賃は、運賃勘定や発送費勘定の借方に記入します。


余談
  • 商品有高帳(材料有高帳、製品有高帳)について:
    • 先入先出法(first-in, first-out nethod; fifo; FIFO)、移動平均法(moving average method)の他に、総平均法(periodic average method)、後入先出法(last-in, first-out method; lifo; LIFO)、個別法(identified cost method)などの出し入れ記帳法があります。
      • どの方法を採用するかの決定にあたっては、物の流れ、実行可能性、物価変動状況等が勘案されなければなりません。

    • 商品有高帳の残高は、実際の商品残高ではありません。実際の商品残高は、棚卸をして数量を求め、その数量に商品有高帳から得られた単価を掛けて求めます。このように棚卸をして残高を求める資産を棚卸資産といいます。
    • 商品有高帳の数量よりも棚卸で得られた数量が少ないことを棚卸減耗といいます。棚卸減耗数量に、商品有高帳から得られた単価を掛けた金額を、棚卸減耗費または棚卸減耗損といいます。また商品の劣化や陳腐化による価値の減少を棚卸評価損といいます。
    • 期末に棚卸をして数量を求め、これに一番最後の仕入単価を掛けた金額を残高とする、商品有高帳を記入していなくてもできる棚卸資産の評価方法が、最終仕入原価法(last cost method)です。
    • また、一度採用した棚卸資産の評価方法は、むやみやたらに変更してはいけません。変更するには、合理的な理由がなければなりません。
      • 法人税法・所得税法では、ある年数を経過した後、「たな卸資産の評価方法の変更承認申請」をして変更します。

    • Over 日商簿記2級試験の商業簿記の勉強では、かなりの労力を振り向けなければならないほど、多様な商品売買形態と棚卸資産の記帳法・評価法があります。


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